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~理解しておきたい「健康経営」の基本とメンタルヘルス対策~
近年、よく耳にするようになった「健康経営」。従業員の健康が大切であるといった視点だけではなく、企業利益にもつながる点が話題となっています。健康経営の旗振り役である経済産業省が推進する施策がどのようなものなのか、またどんな効果があるのかをお伝えしていきたいと思います。
健康経営とは?
健康経営をわかりやすく言うと、「従業員がいきいきと働くことで生産性の向上や組織の活性化を促し、企業の継続的な成長の実現を目指す経営手法」です。従業員の健康促進によって
・生産性の向上
・離職率の低下
・企業のイメージアップ
といった効果が期待できるというものです。また、「平成30年度健康経営度調査」を基にした研究では、健康経営導入前と後の5年では利益率が高くなること、株価にプラスに働くことなどがわかっており、業績や株価上昇を期待できる取り組みでもあることが明らかになっています。
日本で健康経営が推進される背景
経済産業省を中心に健康経営が推進されている背景には
・少子高齢化や労働生産性の低迷
・医療費の増大(健康保険の企業負担の増大)
などがあるといわれています。超高齢社会である日本の人手不足は深刻で、65歳以上の「高齢者」も労働の担い手として期待されており、従業員の健康維持は一層重要となります。また、健康保険の赤字額が企業財政を圧迫してきており、想像以上に膨らみつつあると言われていることなどから、政府主導で推進されるようになったのです。会社(組織)が従業員の健康を管理し健康的に働くことができれば、従業員の生産性が向上し、病院へ罹る頻度が減ることにより健康保険にかかる費用の削減が期待できます。また、“健康経営が評価されると企業のイメージアップにつながる”というプラスの効果が生まれるしくみも作られています。経済産業省はどのような取り組みをしているのでしょうか。
経済産業省の取り組み
経済産業省は健康経営を推進するために、大規模法人部門と中小規模法人部門に分けて「健康経営優良法人」を認定する仕組みをつくりました。また健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定された上位500法人を「ホワイト500」としても認定。さらに東京証券取引所の上場企業の中から「健康経営銘柄」を選定したり、日本政策投資銀行による「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」が融資制度に加わったりと、官民一体となって社会からも投資家からも健康経営に取り組む法人が評価される仕組みとなっています。また、法人の認定においては経済産業省が公表する評価基準によって毎年実施され、継続的な努力が必要になっています。
健康経営の評価基準
では、具体的にどのような基準があるのか2020年度の認定基準から抜粋して紹介します。
・定期健診受診率(実質100%)
・適切な働き方実現に向けた取り組み
・メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
・長時間労働者への対応に関する取り組み
これらは馴染みのある健康対策だと思います。法的な根拠もあり、多くの企業が手掛けてきた対策の延長線上にあるからです。しかし、次のような項目はいかがでしょうか?
・コミュニケーションの促進に向けた取り組み
・病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み
・食生活の改善に向けた取り組み
・運動機会の増進に向けた取り組み
・従業員の感染症予防に向けた取り組み
これまで従業員に任せてきた取り組みを、企業が支援していくことで健康を増進・維持していく試みだとわかる内容だと思います。また、認定に必要な項目には身体の健康や食のほかに、メンタルヘルス不調の防止の観点がポイントとなっています。
健康経営のための心の健康づくり
メンタルヘルスが職場の活力や生産性を左右することは皆さん理解いただいているかと思います。健康経営に欠かせないメンタルヘルス対策について、基本的な考え方である「3つの段階」と「4つのケア」を理解し、“不健康経営”に陥らないように対策をしていきましょう。
「3つの段階」
・一次予防【未然に防ぐ】
・二次予防【早期発見】
・三次予防【職場復帰支援】
これら3つの段階で教育研修や制度の導入、情報提供、労働環境の改善に取り組みながら「4つのケア」を継続的かつ計画的に行うことが重要です。「4つのケア」とは厚生労働省が2015年に公表した「労働者の心の健康の保持促進のための指針」の中でメンタルヘルス対策を効果的に進めるために必要なケアとして示されたものです。
「4つのケア」
・セルフケア
自分自身で行うことのできるケア。働く人が自らのストレスに気づき、予防対処し、また事業者はそれを支援すること
・ラインケア
管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど。
・事業場内産業保健スタッフ等によるケア
企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが行うケア。労働者や管理監督者等の支援や、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案を行うことなど
・事業場外資源によるケア
会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、その支援を受けること
「3つの段階」の取り組みと「4つのケア」を継続的かつ計画的に実施することができれば、労働者のメンタルヘルス不調を防ぎ、発生時も適切に対処できるでしょう。
健康に働くことの実現のために
健康経営を実現するためには、トップが方針を打ち出し、組織づくり、課題の確認、計画の作成・実行などの必要なステップを踏んでいきます。50人以上の職員がいる施設では衛生管理者が置かれ、安全衛生委員会も設置されていることと思います。担当者が主体となって現場にある問題を洗い出し、職員にフィットした健康管理対策を講じていくことが必要です。福祉業界においても、働く皆さんを大切にする経営方針のもと安全、安心に働くことのできる環境が増えていくことを心より願っています。
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