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こんにちは。日々、介護現場の皆さまと向き合いながら、最近はAI導入支援などのコンサルティングも行っている私ですが、先日ある介護事業所のオーナー様とお話ししていた際に、非常に考えさせられるエピソードを伺いました。
今日はそのお話をきっかけに、「これからの10年、労働市場はどう変わるのか」「介護業界が今、備えておくべき採用のあり方」について、私なりの見解を綴ってみたいと思います。
コロナ禍で見えた「介護職への誤解」という悲しい現実
数年前のコロナ禍、多くの業種が不況に陥りました。その際、介護業界には他業種からの転職を希望する方々からの応募が急増した時期があったそうです。
しかし、その当時のことを振り返って、あるオーナー様は苦い表情でこうおっしゃいました。
「あの時、たくさんの応募が来ましたが、結局ほとんど不採用にしたんです。というのも、どこか介護の仕事を『見下している』ような雰囲気を感じる人があまりにも多かった。他で仕事がないから、介護なら誰でもできるだろう、という甘い考えが透けて見えてしまったんです」
このお話を聞いて、私は非常に残念な気持ちになると同時に、世の中における「介護」という仕事へのイメージが、いかに実態とかけ離れ、誤解されているかを痛感しました。
現場を少しでも知っている人間からすれば、介護の仕事はリスペクトの対象でしかありません。 高度な専門知識はもちろん、相手の微細な変化を察知する観察眼、そして何より「心」を通わせる忍耐強さと優しさが求められます。決して「誰でもできる、代わりのきく仕事」などではないのです。
AIが進化しても「絶対に代替できない」領域
現在、私はAIの導入支援なども手がけていますが、技術が進歩すればするほど、改めて確信することがあります。
それは、「介護という仕事は、どれだけAIが進化したとしても、最後まで人間が担うべき聖域として生き残る」ということです。
もちろん、事務作業の効率化や、移乗介助のロボット支援などは進むでしょう。しかし、利用者の不安に寄り添い、最期までその人らしい人生を支える「心の通ったケア」は、アルゴリズムには不可能です。
介護は「人対人」の究極の仕事です。AIには「感情」がありません。相手の表情の裏にある寂しさを汲み取ったり、手を握るだけで伝わる安心感を与えたりすることは、人間にしかできない。この「非認知能力」こそが、これからのAI時代における最強の武器になります。
ホワイトカラーの危機と、5年後の労働市場
一方で、目を外に向けてみると、景色は一変しています。 海外のIT大手企業では、すでに数万人規模のリストラが常態化しています。これまで「安泰」だと思われていたホワイトカラーの仕事が、AIによって次々と代替されているのです。
日本も例外ではありません。 今、デスクワークを中心に仕事をしている方々が、5年後、10年後も同じように職を得られているでしょうか? 私は非常に懐疑的です。
AIを使いこなし、新たな価値を創造できる一握りの人は生き残るでしょう。しかし、単に「指示をこなすだけ」「情報を整理するだけ」の仕事に従事している人々は、必然的に会社を去らざるを得ない状況がやってきます。
そうなった時、人の流れはどう動くか。 私は、かつてのコロナ禍と同じように、再び「現業(現場の仕事)」への大規模な労働移動が起きると予測しています。
トラックのドライバーや、建設現場、そして何よりこの「介護業界」です。AIには代替できない、物理的な介入と心のケアを必要とする仕事に、再びスポットライトが当たる日が必ず来ます。
介護事業所が今、備えておくべきこと
ここで重要なのは、「その時になってから動くのでは遅い」ということです。
将来、他業種から優秀な(あるいは再起をかける)人材が介護業界へ流れてくる。その時に、彼らをスムーズに迎え入れ、戦力化できる体制が整っているかどうかが、介護事業所の命運を分けます。
私が介護系コンサルティングの現場でよくお伝えしているのは、以下の3点です。
1. 「未経験者」を育てるマニュアルと文化の構築
「背中を見て覚えろ」という古い教育体制では、異業種からの優秀な人材は定着しません。彼らが持つ「他業種の視点」を活かしつつ、介護の専門性を最短で身につけられる研修プログラムが必要です。
2. 「ベテランの意識改革」という高い壁
現場には、長年支えてくれているベテラン職員がいます。もちろん彼らは宝ですが、時に「自分のやり方以外は認めない」「新人に厳しい」といった閉鎖的な空気を作ってしまうこともあります。 極論を言えば、「文句ばかり言う頑固なベテラン」よりも、「素直に学ぼうとする未経験の若手」の方が、組織の未来にとってはプラスになることが多いのです。新しい血を拒絶しない文化づくりが急務です。
3. 「介護採用」のブランディング
コロナ禍で見られたような「見下してくる応募者」をフィルタリングしつつ、「この仕事には誇りがある」というメッセージを正しく発信すること。介護職を「最後の手段」ではなく「AI時代における価値ある選択」として提示する情報発信が求められます。
「素直さ」が組織を救う
ブログの冒頭で紹介したオーナー様のお話に戻りますが、結局、採用で一番大切なのは「素直さ」です。
未経験であっても、これまでのキャリアを一度横に置き、目の前の利用者様のために一生懸命になれる人。そうした「素直な未経験者」を大切に育てる土壌がある職場は、10年後も必ず生き残っています。
AIの波は、私たちが想像する以上のスピードで押し寄せています。 「いらなくなる人」が世の中に溢れる前に、介護業界こそが、彼らの受け皿となり、かつ「誇りを持って働ける場所」としての地位を確立しておくべきではないでしょうか。
最後に:一緒に未来を考えませんか?
私自身、AIの導入支援を行いながらも、その本質的な目的は「人間が人間にしかできない仕事(=介護など)に集中できる環境を作ること」にあると考えています。
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介護経営総合研究所 代表|五十嵐 太郎(Taro Igarashi)
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