「AIが便利そうなのは分かる。でも、うちの業界で本当に使えるの? そして、情報漏えいは大丈夫なの?」——最近、介護・医療の現場でこのご相談が一気に増えています。
結論から申し上げると、介護・医療業界は他業界に比べてAI導入が進みにくい傾向がある一方で、導入した瞬間の効果が出やすい領域です。理由はシンプルで、書類・記録・連絡・会議・シフトなど「事務作業の比率」が高く、しかも煩雑だからです。現場で、事務職の方が遅くまで残業している光景を見てきた方も多いのではないでしょうか。特に社会福祉法人では、理事会前の資料づくり・議事録・報告書などが重なり、事務局がひっ迫しやすい構造があります。
しかし、ここで大切なのは「AIを入れれば終わり」ではないという点です。AIは単体で動かすより**Google Workspace(Gmail、ドライブ、スプレッドシート、ドキュメント等)のような業務基盤と連携させることで、効率化のインパクトが何倍にもなります。つまりAI導入は、実質的にはDX(業務の仕組み化・標準化)とセットになりやすい。だからこそ、個人の工夫だけで進めるより、法人として安全に・早く・確実に進める設計が必要になります。
AIで効果が出やすい「現場の困りごと」トップ領域
介護・医療でAIの改善余地が大きいのは、主に次の領域です。
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書類作成:会議資料、報告書、稟議、手順書、研修資料、事業計画の下書き
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メール・連絡文:関係者への依頼文、謝罪文、案内文、確認依頼、催促文
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議事録:会議の要点整理、決定事項・宿題の抽出、次回アジェンダ案
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シフト関連:条件整理、希望集計、ルールチェック、調整案のたたき台
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採用・広報:求人票の改善、応募者対応テンプレ、SNS投稿案、FAQ整備
例えば議事録であれば、録音→文字起こし→要点整理→タスク抽出までを整えるだけで、会議1回あたりの事務工数が大きく下がります。書類作成でも、ゼロから作るのではなく「良い叩き台」をAIに出させることで、担当者は確認・修正・意思決定に時間を使えるようになります。
結果として、残業の削減につながるだけでなく、事務局や管理者の疲弊を減らし、現場の安定にも寄与します。さらに言えば、2026年以降は「AIを使える組織」と「使えない組織」で、ホワイトカラー業務の生産性に差がつきやすくなります。うまく仕組み化できれば、事務工数が実質“人員1名分に相当するレベル”で圧縮できる可能性も十分にあります(※もちろん業務量や体制によって幅はあります)。

ただし最大の壁は「セキュリティ不安」。ここを解消すれば一気に進む
介護・医療でAIが進みにくい最大要因は、便利さではなく 「個人情報・機微情報を扱う怖さ」です。ここを曖昧にしたまま進めると、現場は安心して使えませんし、管理者側も判断が止まってしまいます。
そこで重要なのが、AI活用を「ツール導入」ではなく、ルールと仕組みの導入として設計することです。
1) 情報を3段階で分類する(これが全ての起点)
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レベルA:公開情報(HPに載せる内容、一般的な案内文など)
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レベルB:社内情報(内部資料、業務手順、数値計画など)
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レベルC:個人情報・機微情報(利用者情報、医療情報、家族情報など)
この分類ができると、「AIに入れていい情報/ダメな情報」が明確になります。多くの現場は、ここが曖昧なまま不安だけが先行しています。
2) “入力しない運用”を標準化する(匿名化・伏字の徹底)
レベルCは基本的に、AIへそのまま入力しません。どうしても要約や文章化が必要なら、
3) アカウント・権限・ログの整備(法人導入の肝)
個人のアカウントでバラバラに使い始めると、管理不能になります。法人としては、
4) “AIの使い方研修”は必須(現場の誤用を防ぐ)
セキュリティは「システム」だけでなく「運用」が9割です。
AI導入は「部分最適」ではなく「業務フロー最適」で成果が出る
AIの効果が最大化するのは、単発で文章を作る時ではなく、業務フローに組み込んだ時です。例えば、
このように「前後の流れ」を整えると、担当者が変わっても回り続ける仕組みになります。ここまで来ると、AIは“便利ツール”ではなく、法人の生産性を底上げするインフラになります。

2026年は「AIを使いこなす組織」が標準になる
介護・医療業界は、書類や連絡が多く、改善余地が大きい業界です。だからこそ、AI導入の価値は非常に大きい。一方で、個人情報を扱う以上、勢いだけで始めるのは危険です。
おすすめは、最初から完璧を目指すのではなく、
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使う業務を限定(例:議事録、公開情報の文書、社内手順書の叩き台)
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ルールを作る(情報分類・匿名化・承認フロー)
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小さく試して、効果が出たら全体展開
この流れです。これなら、スピードも安全性も両立できます。
私たちも2月から、AI単体の導入というより、DX全体の設計とセットで「安全に・早く・現場で回る」形を重視して支援を本格化してまいります。残業削減、事務負担軽減、そして現場が本来やるべき支援に時間を戻すために。2026年を「AI活用元年」にしていきましょう。