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2024.09.01
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介護事業者必読!介護経営強化ブログVOL.40 言って変わらないなら仕組みで変えよ – 効果的な組織変革の秘訣

はじめに

「うちの社員は何度言っても変わらない」– この言葉を頻繁に口にする経営者の方々がいらっしゃいます。しかし、この発言には危険な兆候が隠れています。多くの場合、こういった言葉の裏には、経営の行き詰まり、高い離職率、優秀な人材の流出、赤字経営といった深刻な問題が潜んでいる可能性が高いのです。

本コラムでは、「人は言っても変わらない」という前提に立ち、効果的な組織変革の方法について考察します。特に、仕組みの変更を通じて、いかに組織全体を進化させ、社員の心に火をつけるかを探ります。

1. 「言って変わらない」の真実

人間の行動や習慣を変えることは、簡単ではありません。心理学の研究によると、新しい習慣を形成するには平均して66日かかるとされています。つまり、単に「変わってください」と言うだけでは、長年培ってきた行動パターンを変えるのは難しいのです。

さらに、人間には「心理的リアクタンス」という現象があります。これは、自由や選択肢が制限されていると感じたときに、反発心が生まれる心理状態を指します。上司が「変わりなさい」と命令すると、むしろ変化を拒む心理が働く可能性があるのです。

2. 経営者自身の変化の必要性

「社員が変わらない」と嘆く前に、経営者自身が変化の必要性を認識することが重要です。組織の問題は、往々にしてトップの姿勢や行動に起因することが多いからです。

自己啓発の第一人者であるスティーブン・コヴィーは、「影響の輪」と「関心の輪」という概念を提唱しています。「関心の輪」は自分が気にかけているすべてのことを含み、「影響の輪」はその中で自分が直接影響を与えられる範囲を指します。コヴィーは、成功する人は「影響の輪」に集中すると説いています。

つまり、「社員が変わらない」と嘆くのではなく、「自分に何ができるか」「どのような環境を整備できるか」を考えることが、真の経営者の姿勢なのです。

3. 仕組みを変える重要性

組織を変革するには、個々の社員に変化を求めるのではなく、仕組みを変えることが効果的です。なぜなら、仕組みは以下のような利点があるからです:

a) 一貫性:個人の気分や状況に左右されず、常に一定の基準で物事が進む。
b) 可視化:目標や進捗が明確になり、全員が同じ方向を向きやすくなる。
c) 効率化:無駄な作業や重複を排除し、生産性を向上させる。
d) 公平性:個人の裁量に依存せず、公平な評価や処遇が可能になる。

4. 効果的な仕組み作りのポイント

仕組みを変えるといっても、闇雲に新しいシステムを導入すれば良いわけではありません。以下のポイントを押さえた仕組み作りが重要です:

a) 目的の明確化:なぜその仕組みを導入するのか、何を達成したいのかを明確にする。
b) 社員の巻き込み:仕組み作りのプロセスに社員を参加させ、当事者意識を持たせる。
c) 段階的な導入:一度に大きな変更を行うのではなく、小さな成功を積み重ねる。
d) フィードバックの収集:定期的に効果を検証し、必要に応じて修正を加える。
e) 継続的な改善:PDCAサイクルを回し、常により良い仕組みを追求する。

5. 仕組みの具体例

では、具体的にどのような仕組みが組織変革に効果的なのでしょうか。以下にいくつかの例を挙げます:

a) OKR(Objectives and Key Results)の導入
– 組織の目標を明確にし、個人の目標とリンクさせる。
– 定期的な振り返りにより、進捗を可視化する。

b) 360度フィードバック
– 上司だけでなく、同僚や部下からも評価を受ける。
– 多角的な視点から自己の強みや課題を認識できる。

c) タレントマネジメントシステム
– 社員のスキルや経験を可視化し、適材適所の配置を実現。
– キャリアパスを明確にし、モチベーション向上につなげる。

d) アイデア提案制度
– 社員からの改善提案を積極的に募集し、実行に移す。
– 小さな成功体験を積み重ね、変革への意欲を高める。

e) フレックスタイム制やリモートワーク
– 働き方の柔軟性を高め、生産性と満足度の向上を図る。
– 信頼ベースの労務管理へのシフトを促す。

6. 仕組みで心に火をつける

仕組みを変えることで、徐々に人も組織も変わっていきます。ただし、単に機械的なシステムを導入するだけでは不十分です。重要なのは、その仕組みを通じて社員の心に火をつけることです。

例えば、アイデア提案制度を導入する際、単に「提案してください」と言うだけでは効果は限定的です。提案が採用された場合の報奨制度を設けたり、提案者の名前を社内で公表したりすることで、社員のモチベーションを高めることができます。

また、OKRの導入では、達成度に応じて表彰制度を設けるなど、目標達成への意欲を高める工夫が必要です。

さらに、これらの仕組みの導入過程で、社員の意見を積極的に取り入れることも重要です。自分たちで作り上げた仕組みであれば、より主体的に取り組むようになるでしょう。

結論

「言って変わらないなら仕組みで変わる」– この言葉は、効果的な組織変革の本質を表しています。人間の行動を変えるのは難しくても、環境や仕組みを変えることで、徐々に組織全体を望ましい方向に導くことができるのです。

経営者の皆様、社員が変わらないことに腹を立てるのではなく、自らが変化の起点となり、効果的な仕組み作りに取り組んでみてはいかがでしょうか。そうすることで、きっと組織に新しい風が吹き込み、イノベーションの種が芽吹くはずです。

変化は一朝一夕には起こりません。しかし、適切な仕組みと継続的な努力があれば、必ず組織は進化し、社員一人ひとりの心に変革の炎が灯るでしょう。

 

介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにて通信事業、ブライダル事業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:採用コスト2,000万円削減、離職率5割削減、採用単価3万円で200人採用、人材紹介・人材派遣0
人材紹介会社費用の9割減、東京にて施設開設時に160人採用、利益率4倍、薬剤師応募を1時間で獲得、他多数。