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令和6年度の介護報酬改定において、訪問看護分野では質の高いサービス提供を推進するための様々な見直しが行われました。
今回の改定のポイントは、在宅医療と介護の連携を一層強化すること、そして専門性の高い看護師の評価を充実させることです。
主要な改定内容について詳しく解説していきます。
訪問看護の基本報酬の改定
基本報酬については、20分未満から1時間半未満までの各区分で、1単位から3単位の微増となっています。
一方で、理学療法士等による訪問看護については、一定の基準を満たさない場合に8単位の減算が適用されるため、注意が必要です
訪問看護における改定のポイント
1. 専門性の高い看護師による訪問看護の評価
今回の改定では、専門性の高い看護師による訪問看護を評価するため、新たに「専門管理加算」が新設されました。
緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門・人工膀胱ケアに関する研修を受けた看護師や、特定行為研修を修了した看護師が、訪問看護計画の管理を行った場合に、月250単位が算定できます。
これにより、専門的なケアを必要とする利用者への対応が強化されます。
2. 退院当日の訪問看護の評価
医療機関からの円滑な在宅移行を推進するため、退院当日の訪問看護に対する評価が拡充されました。
退院当日に訪問看護を実施した場合、「初回加算(Ⅰ)」として350単位/月が算定可能となります。
退院当日以外の初回訪問の場合は、現行通り「初回加算(Ⅱ)」300単位/月となります。
3. ターミナルケア加算の見直し
ターミナルケア加算について、診療報酬との単位の整合性を図るため、死亡月の加算が2,000単位から2,500単位に引き上げられました。
これにより、看取り期の手厚い支援に対する評価が強化されます。
4. 遠隔死亡診断補助加算の新設
情報通信機器を用いた死亡診断の補助に関する評価として、「遠隔死亡診断補助加算」が新設されました。
在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が、医師の指示に基づき、情報通信機器を用いて死亡診断の補助を行った場合に、150単位/回が算定できます。
5. 24時間対応体制の充実
24時間対応体制の充実を図るため、訪問看護ステーションにおける24時間連絡体制の要件が見直されました。
ICT活用や夜間対応後の勤務調整など、十分な業務管理体制の整備を行うことで、24時間連絡体制加算の算定が可能となります。
以上が、令和6年度介護報酬改定における訪問看護の主な変更点です。
事業者に求められること
専門性の高い看護師の確保・育成
新設された「専門管理加算」を算定するためには、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門・人工膀胱ケアなどの研修を受けた看護師や、特定行為研修を修了した看護師が必要となります。
専門的なケアを必要とする利用者に対応できるよう、こうした専門性の高い看護師の確保・育成を進めていくことが重要です。
医療機関との連携強化
退院当日からの訪問看護に対する評価が新設されたことから、医療機関との連携を一層強化し、円滑な在宅移行支援体制を整備する必要があります。
また、24時間連絡体制の要件が見直されたため、ICTの活用や夜間対応後の勤務調整など、十分な業務管理体制の整備も求められます。
看取り期のケアの充実
ターミナルケア加算が引き上げられたほか、遠隔での死亡診断補助に対する新たな評価が設けられました。
看取り期の利用者に適切なケアを提供できる体制を整備し、医療機関との連携を密にすることが重要となります。
理学療法士等による訪問看護の見直し
理学療法士等による訪問看護については、一定の基準を満たさない場合に減算されることになりました。
看護職員の訪問回数が一定以上確保されるよう、事業所の方向性を検討する必要があります。
生産性向上への取り組み
介護現場の生産性向上を推進する観点から、ICTやテレワークの活用など、働き方改革に向けた取り組みが求められています。
まとめ
今後、在宅医療ニーズの増加が見込まれる中、訪問看護はますます重要な役割を担うことになります。
訪問看護事業者は、今回の改定内容を確実に理解し、質の高いサービス提供と事業の効率化を両立させ、利用者のニーズに的確に応えていくことが期待されています。
<参考>
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html
介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにて通信事業、ブライダル事業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:採用コスト2,000万円削減、離職率5割削減、採用単価3万円で200人採用、人材紹介・人材派遣0
人材紹介会社費用の9割減、利益率4倍、薬剤師応募を1時間で獲得他多数。