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2024.04.29
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令和6年度 介護報酬改定について ~訪問介護編~

令和6年度の介護報酬改定では、全体で1.59%プラスの改定率となりました。その中で、訪問介護の基本報酬は2%強の大きな引き下げとなり、業界に衝撃が走っています。

本記事では、訪問介護に焦点を当て、基本報酬引き下げの背景や事業所・利用者への影響、今後の訪問介護のあり方について考察します。

訪問介護の基本報酬引き下げの背景

今回の改定で、訪問介護の基本報酬は2%強引き下げられました他のサービス種別では、特別養護老人ホームが2.8%以上、老健施設の在宅強化型が4.0%程度の引き上げとなっており、訪問介護の引き下げ幅は際立っています。

平成21年度改定では全サービス種別で基本報酬が引き上げられたため、今回の訪問介護の扱いは予想外の措置だったと言えるでしょう。

訪問介護の基本報酬が引き下げられた主な理由は以下の2点です。

1. 訪問介護の利益率が他のサービスに比べて高かったこと

厚生労働省の介護事業経営実態調査によると、訪問介護の利益率は7.8%で全サービス平均の2.4%を大きく上回っていたことが挙げられています。一方で、この数値には併設の高齢者住宅の利益も含まれている可能性があり、実態を正確に反映していない可能性も指摘されています。

2. 訪問介護は介護職員のみで運営されることが多く、他の職種の処遇改善の必要性が低いと判断されたこと

訪問介護は一般的に介護職員のみで運営されるため、他職種の処遇改善を進める必要がある他のサービスと比べて、基本報酬引き上げの優先度が低くなっている可能性があります。

引き下げにあたり、懸念や反対意見として

「訪問介護は人材不足が深刻で、処遇改善が急務である」
「在宅医療・介護の推進には訪問介護の基盤強化が不可欠である」
「基本報酬の引き下げは、サービスの質の低下や利用者の負担増につながりかねない」

といった声が挙げられています。

厚生労働省は、基本報酬の引き下げ分は処遇改善加算の拡充でカバーできるとしていますが、加算の取得が進まない場合のリスクは残ります。

訪問介護の基本報酬引き下げが、在宅介護の推進に水を差すことにならないよう注視が必要です。

 訪問介護事業所への影響

もともと収支が厳しい中での基本報酬引き下げは、事業所の経営を直撃することが予想されます。実際に、2023年の訪問介護事業者の倒産件数は過去最多を更新しており、経営環境の厳しさがうかがえます。

事業所は効率的な運営体制の構築や、専門性の高いサービス提供による加算の取得など、収支改善に向けた対応が求められるでしょう。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • テクノロジーの活用などによる業務の効率化と生産性の向上
  • 魅力ある職場環境の整備と人材の確保・定着・育成の推進
  • 地域の医療・介護関係者との顔の見える関係の構築と連携の強化
  • 地域のインフォーマルサービスとの協働による重層的な支援体制の整備

こうした取り組みを通じて、訪問介護の基盤強化と質の向上を図っていくことが重要です。

ただし、小規模な事業所では、人手不足や資金面の制約から、十分な対応が難しいケースもあります。

行政には、事業所の規模や地域特性に応じたきめ細かな支援も求められます。

 利用者への影響

訪問介護の基本報酬引き下げは、サービス提供体制や利用者負担にも影響を及ぼす可能性があります。事業所の経営難から、サービス提供回数の減少やスタッフの処遇悪化につながることも懸念されます。

利用者にとって必要十分な質・量のサービスが受けられなくなるリスクがあるのです。

特に、人口密度が低く訪問先が点在する地方部では、移動コストがかさむため、事業所の経営が厳しくなりがちです。

サービス提供エリアの縮小や撤退が進めば、利用者の選択肢が狭まることにもつながります。

事業所には、効率化を図りつつ質の高いサービス提供を維持することが強く求められます。加えて、行政には、地域の実情に応じた事業所の支援や、利用者の負担軽減策の検討も必要と言えるでしょう。

まとめ

令和6年度介護報酬改定における訪問介護の基本報酬引き下げは、事業所の経営と利用者への影響が懸念される内容でした。

事業所には、効率化と質の向上を両立し、厳しい環境下でも必要なサービスを安定的に提供し続ける努力が求められます。同時に、地域を巻き込んだ支援体制の構築も重要です。

今回の改定を契機に、持続可能で質の高い訪問介護の実現に向けた取り組みが進むことを期待したいと思います。

<参考>

https://www.care-news.jp/news/8gSO2

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240125/k10014333601000.html

介護事業の持続可能な成長には、多角的なアプローチと実践的な事例からの学び、経営チームとスタッフの力の結集、そして業界全体での協力が不可欠です。弊社の伴走支援サービスは、これらの課題に対処し、事業の成長を支援するための多様なソリューションを提供します。

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介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにて通信事業、ブライダル事業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:採用コスト2,000万円削減、離職率5割削減、採用単価3万円で200人採用、人材紹介・人材派遣0
人材紹介会社費用の9割減、利益率4倍、薬剤師応募を1時間で獲得他多数。