case study
事例紹介

2023.09.14
介護事業
 

介護事業所のBCP(業務継続計画)解説!義務化の背景と策定のキーポイント

BCP(事業継続計画)の基本知識

BCP(事業継続計画)とは、企業や組織が直面する様々な危機や災害から事業の継続性を確保するための戦略的な計画のことを指します。この計画は、大規模な災害や緊急事態、例えば地震、洪水、感染症の大流行などが発生した際に、その影響を最小限に抑えるための具体的な手順や方針を定めるものです。

2021年4月の介護施設・事業所のBCP策定義務化について

2021年4月より、全国の介護施設・事業所は業務継続計画(BCP)の策定が義務付けられました。経過措置は3年で、例外なくすべての介護事業者が2024年4月までにBCPを策定しなければなりません。この背景には、近年の自然災害や新型コロナウイルスの影響が大きく関与しています。これらの状況を鑑み、介護サービスが安定的・継続的に提供されることの重要性が高まっています。厚生労働省は、介護施設・事業所におけるBCPの策定を支援するための研修を開催し、その資料や動画を公開しています。これにより、事業者は事業の継続性を確保し、利用者に安心してサービスを提供することが可能となります。

具体的には、委員会の開催や指針の整備、緊急時の対策、訓練(シミュレーション)の実施などについて企業で取り決め、計画としてまとめる必要があります。しかし実際のところ、介護業界でBCPの重要性はまだ浸透していない実情があります。内閣府が公表した最新の実態調査では、「医療、福祉」の業種でBCPを策定済みの企業はわずか32.8%でした。さらに全体の19.6%は「BCPそのものを知らなかった」と回答しています。また、令和4年3月時点で大企業のうち70.8%、中小企業のうち40.2%がBCPを策定済みであることがわかっています。その他企業の割合(41.9%)を合わせると、BCP策定済みの企業は45.7%という結果となりました。

参考:企業の事業継続及び防災に関する実態調査結果(令和4年3月)|内閣府

防災計画とBCPのキーな違い

防災計画とBCP(事業継続計画)は、目的や内容が異なるため、それぞれの特性を理解することが重要です。

防災計画は、主に自然災害や事故などの緊急事態が発生した際に、人々の命を守るための安全確保や避難方法を中心に策定される計画です。具体的には、避難経路の確保、避難所の設定、緊急連絡方法など、災害発生時の対応策を詳細に定めています。

一方、BCPは事業の継続を目的としています。これは、災害や事故が発生した場合でも、事業活動を継続するための計画です。BCPには、経営資源の確保や事業再開の手順、必要なリソースの確保方法、事業活動の優先順位など、事業継続に関する詳細な手順や方針が含まれています。特に、重要な業務の継続性を確保するための対策や、事業再開までのタイムラインを明確にすることが求められます。

総じて、防災計画は人々の安全を確保することを最優先とし、BCPは事業の継続性を確保することを目的としています。これらの計画は、それぞれ異なる視点から災害対策を考えるため、組織や企業においては両方の計画を適切に策定・実施することが必要です。

BCP(事業継続計画)の策定の重要性とそのメリット

事業継続計画(BCP)の策定は、企業や事業所にとって非常に重要な取り組みとなっています。その理由として、以下のような多岐にわたるメリットが挙げられます。

緊急事態への迅速な対応

BCPの策定により、緊急事態が発生した際の対応が迅速かつ効果的に行えます。例えば、新型コロナウイルスのような大規模な感染症が拡大した場合、事前に策定されたBCPに基づく行動計画に従って、業務の継続や対応策を迅速に実施することが可能となります。これにより、事業の中断を最小限に抑えることができるだけでなく、従業員や関係者の安全も確保されます。

顧客や利用者からの信頼の獲得

非常事態が発生しても、BCPに基づいて適切に対応する事業所は、顧客や利用者からの信頼を獲得することができます。特に、介護事業所などの公共性の高い事業所では、地域社会への貢献や安全確保が求められるため、BCPの策定はその信頼性を高める重要な要素となります。

税制優遇や補助金の受給

BCPを策定し、それに基づいて事業を運営する中小企業は、「事業継続力強化計画」の認定を受けることができます。この認定を受けることで、防災・減災に関する設備投資に対する税制優遇や自治体からのBCP関連の補助金、信用保険の保証枠の追加など、多くの経済的なメリットを享受することができます。ただし、これらの優遇措置や補助金は一定の期間限定である可能性があるため、早めのBCP策定と申請が推奨されます。

総じて、BCPの策定は事業の継続性を高めるだけでなく、経済的なメリットや社会的な信頼性の向上にも寄与する重要な取り組みとなっています。今後も様々なリスクが予測される中、BCPの策定とその適切な運用は、事業所の持続的な成長を支える鍵となるでしょう。

実践ガイド: BCP策定のステップ

自然災害時の対応策

自然災害が発生した際の最優先事項は、従業員や関係者の安全確保です。具体的には、施設の安全確認を迅速に行い、危険が予想される場合は避難所を速やかに確保することが求められます。さらに、事業の継続性を保つためには、必要なリソースや資材の確保、通信手段の確立といった対策を計画的に進めることが重要です。特に、通信インフラがダウンする可能性があるため、代替手段の検討や事前の準備が不可欠です。

感染症発生時の対応策

感染症が拡大した場合、その速やかな収束と事業の継続が大きな課題となります。まず、感染拡大の防止策を迅速に立案し、従業員の健康管理を徹底することが求められます。具体的には、感染症対策の教育や定期的な健康チェック、適切な消毒作業の実施などが重要となります。また、リモートワークの導入やオフィスの換気、感染症に関する最新情報の共有など、継続的な対策の更新と実施が必要です。

BCPを策定する際には、厚生労働省の「介護施設・事業所における事業継続ガイドライン」や内閣府「事業継続ガイドライン」を参考にしましょう。ここでは厚労省のガイドラインをもとに策定方法を解説していきます。

【介護施設・事業所向けBCPひな形】

介護事業者のBCP策定とその後の運用の重要性について

近年、日本国内での自然災害の増加や感染症の拡大など、様々な緊急事態が発生しています。このような状況下で、介護事業者は事業の継続性を確保するために、BCP(事業継続計画)の策定が義務付けられています。しかし、単に計画を策定するだけでは十分ではありません。その後の運用や、状況に応じた定期的な見直しも非常に重要となってきます。

BCPは、災害や緊急事態が発生した際に、事業を継続するための具体的な手段や手順を明確にするものです。そのため、策定された計画は常に最新の情報を取り入れ、適切に更新することが求められます。例えば、新型コロナウイルスのような未知の感染症が拡大した場合、事前に策定されたBCPを適切に見直し、新しい対策や手段を追加することが必要となります。

また、介護事業者は高齢者や障害者など、多くの利用者が生活の支えとしてサービスを受けています。そのため、事業の中断やサービスの提供ができなくなることは、利用者の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。このような背景から、BCPの策定とその後の運用は、介護事業者にとって非常に重要な課題となっています。

最後に、BCPに関する基本的な知識と、介護事業者における導入の重要性について解説しました。災害や緊急事態が発生した際に、事業を継続するための計画をしっかりと策定し、その運用を大切にすることが、今後の介護業界の発展のためにも不可欠です。

 

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介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにてブライダルマーケットの営業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:離職率5割削減、採用単価3万円、人材紹介・人材派遣0、人材紹介会社費用の9割減、利益率4倍等。