case study
事例紹介

2023.09.12
介護離職
 

仕事と介護の狭間で:介護離職の真実とその対策

介護離職の定義と背景

家族や親戚の介護のために職を辞めることを指す言葉です。日本は急速に高齢化しており、多くの労働者がこのような選択を迫られる状況になっています。しかし、この選択は決して軽いものではありません。仕事を辞めることによって生じる経済的な影響はもちろん、再就職の難しさやキャリアの中断など、さまざまな問題が関連しています。公益財団法人生命保険文化センターの情報によれば、2021年には約9.5万人が介護等の理由で離職しており、特に女性の離職者が多いことが明らかになっています。また、年齢層で見ると、55~59歳が最も高い離職率を示しています。このような背景から、介護離職は今後も増加する可能性があり、それに伴う経済的・社会的な影響も大きくなると予想されます。したがって、介護離職に関する正確な知識と対策が求められています。

数字で見る介護離職の現状

日本の高齢化社会において、介護の問題は日々増大しています。総務省の最新のデータを基に、介護離職の実態を詳しく探ると、驚くべき事実が明らかになります。

  • 介護者の総数
    日本には約628万人の介護者が存在しています。この数は、日本の成人人口の一部を占める大きな数字です。介護は、家族や親戚、友人など、多くの人々にとって身近な課題となっています。
  • 働きながらの介護
    介護を行っている人々の中で、仕事を持つ人は約346万人に上ります。これは、全介護者の約6割が働きながらの介護を実現していることを示しています。多くの人々が、仕事と介護の両立に努力しています。
  • 介護離職の現状
    過去1年間で「介護・看護のため」に職を辞めた人の数は、約9.9万人に上ります。これは、年間で約10万人が介護離職を選択していることを意味します。この数字は、介護離職の深刻さを物語っています。
  • 介護離職の背景
    多くの人々が介護離職を選択する背景には、仕事と介護の両立の難しさ、職場の理解の不足、経済的な負担など、さまざまな要因が考えられます。これらの問題を解決するための支援策や制度が求められています。
  • 今後の展望
    介護離職の問題は、今後も増大する可能性があります。高齢化が進む中で、介護の需要は増加し続けるでしょう。この問題に対する対策や支援は、今後の日本社会にとっての大きな課題となります。

総務省のデータを基にした上記の分析から、介護離職の現状とその背景、今後の展望を理解することができます。この問題に対する正確な認識と対策が、今後の日本社会の健全な発展のためには不可欠です。

参考:総務省データ

介護離職の主な原因と実際の事例

近年、多くの労働者が「仕事と「手助け・介護」の両立の難しさ」を理由に離職を選択しています。この現象は、高齢化社会が進む中での家族の役割や責任の変化を反映していると言えます。特に、中高年の労働者にとっては、親や親戚の介護が必要になるケースが増えてきており、これが職場でのパフォーマンスや生活の質に影響を与えることが多いです。

モデルケース:N子さんの事例

N子さん(54歳)は、母親の介護のために離職を決意しました。彼女は独身で、実家は持ち家であるため、経済的な心配は少ないように思えます。しかし、実際には、毎日が介護だけの生活になり、その結果、彼女は精神的な負担を感じています。A子さんのようなケースは、日本全国で増えてきており、多くの人々が似たような状況に直面しています。

介護の負担は、物理的なものだけでなく、心理的なものも含まれます。例えば、A子さんは、母親の健康状態の変化や、将来の介護計画についての不安を抱えています。さらに、彼女は自分の健康や将来の生活についても心配しています。このような心理的なストレスは、介護を行う人々の生活の質を低下させる要因となっています。

結論として、介護離職は、単なる経済的な問題だけでなく、心理的な側面も考慮する必要があります。社会全体として、この問題に取り組むための新しい方針や支援策を考える必要があるでしょう。

介護離職のメリットとデメリットについての詳細な考察

介護離職のメリット

近年、40代を中心に介護離職のケースが増加しています。統計によれば、介護を行っている人の数は約628万人に上り、その中で仕事を持つ人は約346万人とされています。これは、多くの日本人が職場での業務と家庭での介護という二つの大きな責任を同時に背負っていることを示しています。介護離職を選択する最大のメリットは、仕事と介護の間で生じるストレスからの解放です。特に、仕事と家庭の両方でのサポートや介護が求められる環境では、男性で62.1%、女性で62.7%と、約6割の人々がそのストレスを感じています。

介護離職のデメリット

しかし、介護離職にはデメリットも存在します。最も顕著なのは、収入の減少です。介護離職を選択した後、多くの人々が経済的な困難に直面しています。具体的には、「精神面」で66.2%、「肉体面」で63.2%、「経済面」で67.6%の人々が、離職後の負担が増加したと感じています。さらに、収入の減少は家計や将来のライフプランに大きな影響を与える可能性があります。特に、現役での収入が減少すると、退職金や公的年金の受給額も同様に減少するリスクが高まります。

結論: 介護離職は、多くのメリットとデメリットを持つ選択です。それぞれの状況やニーズに応じて、最も適切な選択をすることが重要です。介護と仕事の両立は簡単ではありませんが、適切なサポートや情報収集を通じて、最良の決定を下すことができます。

介護離職を防ぐための国と企業が行う対策

政府は「介護離職ゼロ」を目指して、多岐にわたる取り組みを進めています。これには、介護の受け皿の拡大、介護人材の確保・育成、介護ロボットの普及推進などが含まれます。特に、介護の受け皿の拡大は、高齢者や障害者が安心して生活できる環境を提供するための重要なステップです。また、介護人材の確保・育成は、質の高い介護サービスを提供するための鍵となります。介護ロボットの普及推進は、労働力不足を補完し、介護者の負担を軽減するための有効な手段となっています。

一方、多くの企業も介護離職を防ぐための取り組みを実施しています。これには、社内SNSや研修、ハンドブックの作成を通じて、介護支援の啓発活動を行っています。さらに、企業は従業員のメンタルヘルスのサポートや、介護に関する情報提供、相談窓口の設置など、多岐にわたるサポートを提供しています。これにより、従業員が介護の負担に悩まされることなく、安心して仕事を続けることができる環境が整っています。

総じて、政府と企業の双方が、介護離職を防ぐための取り組みを進めていることは明らかです。これらの取り組みは、日本の高齢化社会において、持続可能な介護サービスの提供を実現するための重要なステップとなっています。今後も、これらの取り組みがさらに進化し、より多くの人々が安心して介護を受けられる社会が実現されることを期待しています。

Caregiver discussing care plan

介護と仕事の両立のための具体的アドバイス

介護と仕事の両立は、多くの人々にとって大きな課題となっています。しかし、適切な対策とサポートを受けることで、この課題を乗り越えることができます。以下に、介護離職を避けるための実践的なヒントを詳しく紹介します。

会社の支援制度を最大限に活用する

会社には、従業員の介護支援のためのさまざまな制度があります。これらの制度を知ることで、介護の負担を軽減することができます。例えば、介護休業制度や短時間勤務制度など、多くの企業が提供しているサポートを利用することが推奨されます   

介護サービスを駆使して、日常の負担を軽減する

介護サービスは、日常生活のサポートや専門的なケアを提供してくれます。これらのサービスを利用することで、介護者の負担を大きく軽減することができます。また、専門家のアドバイスやサポートを受けることで、より質の高い介護を提供することができます。

家族や友人、地域のネットワークを有効に活用する

介護の負担は一人で抱えるものではありません。家族や友人、地域のネットワークと協力することで、サポートを受けることができます。また、地域のネットワークを通じて、介護に関する情報や経験を共有することで、新しい知識やスキルを習得することができます。

これらのヒントを取り入れることで、介護と仕事の両立がより実現可能となります。また、自分自身の健康やメンタルを大切にすることも忘れずに、バランスの取れた生活を目指しましょう。

まとめ 介護離職と向き合う私たちの未来

Trained caregiver

介護離職は、現代日本の深刻な課題の一つとして浮かび上がっています。この記事を通じて、その実態や背後にある理由、そしてそれを防ぐための取り組みやヒントを詳しく探ることができました。しかし、数字や事例だけでは、その全貌を捉えることは難しいです。

実際に介護の現場で奮闘する人々の心の中には、愛と犠牲、希望と絶望が入り混じっています。それぞれの家庭や個人が直面する問題はユニークであり、一つの答えや解決策が全てに当てはまるわけではありません。

しかし、この問題に真摯に向き合い、共に考え、助け合うことで、より良い未来を築くことができるでしょう。介護離職の課題は私たち一人一人に関わるものです。社会全体での理解と協力が必要です。そして、それぞれの立場でできることを見つけ、行動に移していくことが大切です。

最後に、介護を必要とする人々と、それを支える家族や介護者たちに、心からの敬意と感謝を表します。彼らの経験や努力が、私たちの社会をより暖かく、より理解し合えるものにしてくれることを信じています。

詳細についてご興味があればお気軽にお問い合わせ下さい。
https://kaigo-keiei-labo.jp/contact/

介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにてブライダルマーケットの営業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:離職率5割削減、採用単価3万円、人材紹介・人材派遣0、人材紹介会社費用の9割減、利益率4倍等。