case study
事例紹介

2023.09.12
介護事業
 

介護職の離職危機:4つの主要理由とその解決

介護職の離職に関する現状と背景

近年、介護業界は深刻な人手不足に直面しており、多くの施設やサービスがこの問題に悩まされています。介護労働安定センターの最新の調査結果によれば、介護職の不足感は65.3%に達しており、この数字は年々増加している傾向にあります。日本の高齢化が進む中、高齢者の需要が増加しているため、介護職の人手不足は今後も続くと予想されます。特に、65歳以上の高齢者の人口が急速に増加している現状を鑑みると、この問題は今後も深刻化することが予想され、業界全体での対策が求められています。

介護労働者の勤続意欲とその背景

介護職の平均離職率は14.9%と、全産業の平均離職率15.6%と比較してもほぼ同等の水準にあります。しかし、この数字は2005年度以降で最も低い離職率を示しており、これは介護業界の努力の結果とも言えるでしょう。人手不足の中、多くの施設やサービスが従業員の待遇改善や教育・研修の充実を図っており、その結果として勤続意欲が上昇していると考えられます。しかし、まだまだ改善の余地は多く、業界全体での取り組みが必要とされています。

緊急!介護職の主な4つの離職理由

1 人間関係のストレス:職場の人間関係への不満

人間関係のトラブルは、どの業界でも離職の大きな理由となります。しかし、介護業界においては、この問題が特に顕著です。介護業界は、チームワークが非常に重要とされる分野であり、職員同士のコミュニケーションや協力が求められます。そのため、一人ひとりの職員の人間関係がスムーズでないと、業務の効率や質に影響を及ぼす可能性があります。

介護の現場では、様々な背景や価値観を持つ職員が集まります。年齢や経験、専門知識など、多様な要素が絡み合いながら、日々の業務を進めていきます。このような環境下で、意見の対立やコミュニケーションの不足が生じることは少なくありません。

また、介護業界は感情労働が多いため、職員同士の人間関係が悪化すると、それが直接的にサービスの質に影響を及ぼすことも考えられます。利用者に対するサービスの提供は、職員の心の余裕や精神的な安定が必要とされるため、人間関係のトラブルはその質を低下させる要因となり得ます。

このように、介護職における人間関係の不満は、単なる職場の問題ではなく、サービスの質や利用者の満足度にも影響を及ぼす重要な課題となっています。職場の人間関係を改善することは、介護業界全体の質の向上にも繋がると言えるでしょう。

2 ライフイベント:結婚・出産などのライフスタイルの変化

介護業界は、多くの女性が働いている特徴的な分野であり、その中で結婚や出産といったライフスタイルの変化は、離職を考える大きな要因となっています。特に、結婚や出産を迎えると、家庭の役割や子育ての責任が増えるため、仕事との両立が難しくなることが多いのです。このため、多くの女性が子育てとのバランスを取るため、または家庭の状況を考慮して、介護の仕事を一時的にあきらめることを選択します。このようなライフイベントは、女性のキャリアパスに大きな影響を与えることがしばしば見られます。また、介護業界自体が体力的にも精神的にも大きな負担が伴う仕事であるため、家庭との両立がさらに困難になることも少なくありません。このような背景から、結婚や出産を機に介護職を辞める女性が増えているのです。

3ビジョンの不一致:会社の経営方針や理念に合わない

介護業界において、経営方針や会社の理念は非常に重要な役割を果たしています。これは、介護業界が患者や利用者との直接的な関わりを持つサービス業であるため、その理念や方針が従業員の業務の質やモチベーションに大きく影響するからです。従業員が会社の理念や経営方針に共感できない場合、その結果として日々の業務に対する熱意やモチベーションが低下することが考えられます。

また、介護業界は感情的な負担が伴うことが多いため、会社の理念や経営方針に共感できるかどうかは、従業員の精神的な安定にも影響します。例えば、会社の理念が「利用者の笑顔を最優先」としている場合、その理念に共感できる従業員は、難しい状況下でも利用者のために最善を尽くすことができるでしょう。一方、その理念に共感できない従業員は、業務に対する不満やストレスを感じることが増える可能性があります。

このように、経営方針や会社の理念に共感できないと、従業員の業務の質やモチベーション、さらには精神的な安定にも影響が出るため、離職を考える要因となることが多いのです。従業員と会社の価値観やビジョンが合致しているかどうかは、長期的な雇用関係を築く上で非常に重要な要素となります。

4 キャリアの不確実性:社内の評価や将来性が不透明

介護業界において、キャリアパスが明確でない、または評価制度が不透明な場合、職員のモチベーションや働きがいを大きく低下させる要因となります。介護職員は日々、高齢者や障害者のサポートを行っており、その努力や成果が正当に評価されないと感じると、仕事の意欲を失う可能性が高まります。また、キャリアアップのための具体的な指針や方針が不足していると、自分の将来像を描くことが難しくなり、結果として離職を考える職員が増えることとなります。明確な評価基準やキャリアプランが提示されていないと、職員は自分の努力が報われるのか、また、将来的にどのような役職や業務に就けるのかが不明確となり、不安や疑問を抱えることとなります。このような背景から、介護業界におけるキャリアパスの明確化や評価制度の透明性向上が強く求められています。

実践!介護職の離職率を下げるための5つの対策

介護職の離職率を下げるための対策は、業界全体の課題として取り組むべき重要なテーマです。以下に、そのための具体的な5つの対策を詳しく解説します。

1 スキルアップ:職員教育の実施

介護職員のスキルアップはもちろん、彼らのモチベーションを向上させるための教育は、離職率を下げるための鍵となります。定期的な研修やセミナーを通じて、最新の介護技術や知識を身につけることで、職員の自己成長を促進し、職場の満足度を高めることができます。

2 公平性の確保:適切な評価制度の設置

職員一人ひとりの努力や成果を明確かつ公平に評価する制度を設けることは、モチベーションの維持に不可欠です。定期的な評価を行い、その結果をもとに昇進や賞与を決定することで、職員のやる気を引き出すことができます。

3コミュニケーション強化:面談などでスタッフ間のコミュニケーションを増やす

スタッフ間のコミュニケーションは、職場の雰囲気やチームワークを向上させるために欠かせません。定期的な面談やミーティングを設けることで、スタッフ同士の意見交換を促進し、問題点や改善点を共有することができます。

4 ワークライフバランス:介護休業や育休制度などのサポート制度を充実させる

職員のライフスタイルや家庭の状況に合わせて、柔軟なサポート制度を提供することは、長期的な雇用を促進するために重要です。例えば、子育て中の職員のための育休制度や、介護を必要とする家族を持つ職員のための介護休業制度など、多様なニーズに対応する制度を整備することで、職員の離職を防ぐことができます。

5 健康第一:時間外労働や深夜労働の見直し

過度な時間外労働や深夜労働は、職員の健康を害するだけでなく、モチベーションの低下を招く大きな要因となります。労働時間の見直しや、適切な休憩時間の確保を行うことで、職員の健康とモチベーションを維持し、結果的に離職率を下げることが期待できます。

これらの対策を実施することで、介護職の離職率を大きく下げることができるでしょう。

モチベーション向上!介護職の職員の満足度を上げる方法

介護職の職員の満足度を上げるためには、多くの要因が考慮される必要があります。まず、職場環境の改善は欠かせない要素です。快適で働きやすい環境を提供することで、職員のモチベーションを高めることができます。次に、福利厚生の充実も重要です。福利厚生がしっかりと整っていると、職員は安心して仕事に取り組むことができ、長期的に働き続ける意欲も湧きます。さらに、キャリアアップの機会の提供も欠かせません。成長の機会を持つことで、職員は自分の将来を明確に見据えることができ、より一層の努力をすることが期待されます。特に、介護業界では、職員の声をしっかりと聞き取り、それに応えることが非常に重要です。職員の意見や要望を尊重し、それをもとに改

Trained caregiver

善策を考えることで、職員の満足度を一層高めることができるでしょう。

組織改革!離職率を下げるには仕組みづくりが必須!

離職率を下げるためには、単なる短期的な対策や一時的な取り組みではなく、組織全体としての持続的な仕組みづくりが不可欠です。この仕組みづくりには、具体的な対策や制度の導入はもちろん、組織の基盤となる文化や価値観の醸成が含まれます。例えば、オープンなコミュニケーションを奨励する組織文化や、職員の成長をサポートする教育制度の導入などが考えられます。また、リーダーシップのあり方も非常に重要です。上層部やマネージャーが率先して職員の声を聞き、それに応じたサポートを行うことで、職員の満足度や組織への所属意識を高めることができます。このような組織全体の取り組みを通じて、離職率の低減だけでなく、組織の持続的な成長や職員のモチベーション向上も期待できるでしょう。

 

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介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにてブライダルマーケットの営業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:離職率5割削減、採用単価3万円、人材紹介・人材派遣0、人材紹介会社費用の9割減、利益率4倍等。